「ヘルパゴス」は、漂着した無人島から生還するため、水や食料を集め、イカダを作り、迫りくるハリケーンから逃れることを目指す、手に汗握る「ニセ協力型」サバイバルゲームです。 最初は全員で協力し合うものの、徐々に枯渇していく資源を前に、プレイヤー間の信頼は揺らぎ、生き残りをかけた交渉、談合、そして裏切りが横行します。果たして、あなたはこの極限状況を生き延び、無事に島を脱出できるでしょうか?
大人数でワイワイ楽しめる、スリルと笑いに満ちたパーティーゲームとしても超おすすめです。
「ヘルパゴス」はどんなゲーム?基本情報
- プレイ人数: 3~12人
- プレイ時間: 約20分
- 対象年齢: 10歳以上
- ゲームデザイナー: ロランス&フィリップ ガムラン
- アートワーク: ジョナサン オコント
- メーカー: Gigamic (オリジナル版), すごろくや (日本語版)
- 発売時期: 2017年 (オリジナル版)
- ジャンル: サバイバル、協力(風)、交渉、パーティーゲーム
ヘルパゴスの内容物
「ヘルパゴス」のコンポーネントは以下の通りです。

- ゲームボード:1枚
- カード:91枚(天候カード、難破船カードなど)
- 木製の玉(魚):6個
- 木製の資源マーカー(水、食料、木材):3個
- 麻袋:1枚
- 説明書:1部
※難破船カードは、このレビューでは「アイテムカード」と呼称します。
ヘルパゴスのゲーム準備
ゲームの準備は以下の通りです。
- ゲームボードの配置: ゲームボードを中央に置きます。
- 資源マーカーの配置: 水、食料、木材の各マーカーを、ゲームボードのサバイバルトラックの初期位置に置きます。
- カードの準備: 天候カード、アイテムカードをそれぞれシャッフルし、所定の位置に山札として置きます。天候カードは末尾6枚のいずれかに「嵐(ハリケーン)」が含まれるようにします。
- 初期アイテムの配布: 各プレイヤーにアイテムカードを規定枚数配ります。(難易度調整可能)
- 魚の準備: 木製の玉(魚)を麻袋に入れます。
- スタートプレイヤーの決定: 任意の方法でスタートプレイヤーを決め、スタートプレイヤーマーカーを渡します。

これでゲーム準備は完了です。
ヘルパゴスのルール・遊び方
ゲームは複数のラウンドで構成され、各ラウンドは以下のフェーズで進行します。ハリケーンが島を襲う前に、生存者全員分のイカダと、航海に必要な水・食料を確保し脱出することが目的です。
重要なポイント:ラウンド中の各フェーズでは、話し合い、交渉、脅迫を自由に行うことができます。約束を忠実に守る義務はありません。アイテムカードは基本的にいつでも使用可能です。
ゲームの目的
島を脱出すること。ただし、それが全員でとは限りません。1日の終わりに、生き残っている人数分の食糧、水、イカダがあれば脱出成功です。航海を乗り切るための追加の水・食料も必要になります(生存者1人につき、通常の消費分とは別に水1、食料1)。
注意: 生存者の一部だけで島を脱出することはできません。生きている者は、全員が揃って脱出する必要があります。
ラウンドの流れ
- 第1フェーズ:スタートプレイヤー変更
(最初のラウンドではこのフェーズをスキップします)
スタートプレイヤーマーカーを右隣のプレイヤーに渡します。もしスタートプレイヤーが脱落していたら、そのマーカーはさらに右隣の生存しているプレイヤーに渡ります。 - 第2フェーズ:天候カード公開
スタートプレイヤーは天候カードの山の一番上を表にして公開します。天候カードには、そのラウンドで得られる水の量や、嵐の接近(ハリケーンカード)などが示されています。
- 第3フェーズ:アクション実行
スタートプレイヤーから時計回りに順番に、各プレイヤーは以下の4つのアクションの中から1つを選択し実行します。
- 魚を捕る: 袋から木製の玉を1個引きます。引いた玉に描かれた魚の数だけ食糧を獲得し、食料マーカーを進めます。
- 水を集める: 公開されている天候カードに描かれている水滴の数だけ水を獲得し、水マーカーを進めます。
- 木材の収集といかだの組み立て: 木材を収集します。森の奥深くを探索するかを決め、集めたい木材の数を宣言します。袋から宣言した数だけ玉を引き、全て白い玉(安全)だった場合、引いた玉の数と同じだけ木材を獲得し木材マーカーを進めます(木材6つでイカダ1人分)。黒い玉(毒ヘビ)を引いてしまった場合、ヘビに噛まれ病気(マヒ状態)になります。
- 漂流物を探す(アイテム入手): アイテムカードの山札の一番上から1枚カードを引いて手札に加えます。アイテムには、水や食料になるもの、アクションを強化するもの、他プレイヤーを妨害するものなど様々です。中には役に立たないガラクタも…。
- 第4フェーズ:生存チェック
生存しているプレイヤー1人につき「水1つ」と「食糧1つ」の両方が必要です。水、食糧の順番で不足していないかチェックします。
- 水を消費する: 生存しているプレイヤーの人数と同数かそれ以上の水がある場合は、人数分の水を消費し水マーカーを減らします。不足している場合は、まずプレイヤーが持つ水系のアイテムカードで補給できます。それでも不足する場合、投票によって脱落者を決めなければなりません。
- 食糧を消費する: 水と同様の手順で食糧も処理します。不足分は食料系のアイテムカードで補給でき、それでも足りなければ投票で脱落者を決めます。
- 第5フェーズ:ゲーム終了を確認する
以下のいずれかの条件でゲームが終了します。
- 脱出成功: ラウンド終了時に、生存しているプレイヤー全員分のイカダが完成しており、かつ生存者1人につき通常の消費分とは別に「水1つ」と「食糧1つ」の備蓄があれば、生存者全員の勝利です。つまり、生存チェックの時点で人数の倍の水と食料が必要です。
- ハリケーン到来: 天候カードからハリケーンカードがめくられたラウンドの終了時に、脱出条件を満たしていなければ、生存者全員の敗北となります。
- 全員脱落: 渇きや飢え、あるいは投票によって生存者が0人になった場合も、全員敗北です。

投票と脱落
水や食料が不足した場合、または嵐が来た場合(特定の天候カード)、生存者全員による投票で脱落者を1人ずつ決定します。「せーの」で指を差すなどして多数決で決めます。話し合い、アイテムを使った交渉や脅迫も自由です。
- 最多票が複数の場合: そのラウンドのリーダーが脱落者を1人選びます。
- 脱落回避: 自分が最多票を集めても、不足分の水や食料をアイテムで補えれば脱落を免れます。また、「銃」と「弾」のアイテムがあれば、自分に投票したプレイヤーを撃って票を減らすことも可能です(撃たれたプレイヤーは脱落)。
- 脱落者のアイテム: 投票で脱落した場合、持っていたアイテムカード(装備品以外)は、脱落者の左右隣のプレイヤーにランダムで1枚ずつ渡されます。銃で撃たれて脱落した場合、アイテムは全て撃った相手に奪われます(装備中の銃も渡す)。装備中のアイテムは基本的に失われません。
- 脱落後の扱い: 脱落したプレイヤーはゲームから除外され、以降のアクションや脱出はできません。公式の応用ルールとして「脱落者は亡霊として投票に参加できる」というものもあり、こちらを採用するとさらに盛り上がるかもしれません。
マヒ状態について
- 効果: アイテムの使用、アクション、投票などが一切できなくなります。マヒした日の投票には参加できません。
- 回復: マヒした次の日の全員のアクションフェーズが終了したタイミングで回復します。つまり、マヒした次の日はアクションはできませんが、その日の投票には参加できます。
- 脱出: マヒしていても、脱出条件を満たせば一緒に脱出できます。
アイテムカードについて
アイテムカードは、基本的にいつでも使用できます。自分のターンでなくても、他のプレイヤーのターン中でも、投票中でも使用可能です。アイテムを使用しても自分のアクションターンは消費しません。
- 交換・譲渡: アイテムカードは他のプレイヤーと自由に交換、譲渡してOKです。種類を口頭で伝えるのも良いですが、カードの中身を直接見せてはいけません。
- 装備アイテム: 一部のアイテムは「装備」することで効果を発揮します。手札から自分の前に公開することで装備状態となります。
ヘルパゴスを遊んだ感想レビュー
実際に「ヘルパゴス」を遊んでみた感想です。
協力と裏切りの絶妙なバランスが生む人間ドラマ!
ゲーム開始直後は「みんなで力を合わせて脱出しよう!」という清らかな心で満ち溢れています。しかし、資源がみるみる減っていき、天候にも恵まれず、誰かがヘビに噛まれて動けなくなったりすると、途端に空気が変わります。「あの人、最近アイテム集めてばっかりで貢献してないよね…?」「この水、本当に全員分あるのかな…?」そんな疑心暗鬼が芽生え始めたら、もうヘルパゴスの思うツボです。普通に遊んでいると全員での脱出は難しいです。序盤に釣り竿や水筒、斧のような装備品が手に入らない限り、全員での脱出は不可能ではないかと思います。
食料や水が足りなくなった時の投票フェーズはまさに地獄絵図。生き残るために必死の交渉、泣き落とし、時には大胆な裏切りも。「さっき協力するって言ったじゃないか!」という悲痛な叫びが島に響き渡ります。この、協力と裏切りが表裏一体となった緊張感がたまらなく面白いです。まさに「ニセ協力型」というジャンルがピッタリですね。
アイテムが引き起こす予測不能な展開
アイテムカードの存在がゲームをさらに面白くしています。強力な効果を持つアイテムもあれば、この無人島では何の役にも立たないガラクタも。必死の思いで手に入れたアイテムがガラクタだった時の絶望感、逆にここぞという場面で役立つアイテムを引いた時の高揚感は格別です。「銃」と「弾」が揃った時の全能感と、それをチラつかせて他者を威圧する快感(?)もこのゲームならでは。
どのアイテムを持っているか、誰が何を持っているかを把握し、交渉材料にするのも重要。アイテムの引きと使い方次第で、絶体絶命のピンチを切り抜けたり、逆に有利な状況から一転して窮地に陥ったりと、最後まで展開が読めません。
大人数でこそ輝くパーティーゲームの傑作
プレイ人数が3人から最大12人と幅広く、特に大人数でプレイした時のカオスっぷりは最高です。あちこちで密談が始まり、派閥ができ、裏切りが横行し、まさに人間不信のるつぼ。しかし、それがなぜか爆笑を誘うのです。ゲームが終わる頃には、友情にヒビが入っているか、あるいはより強固な絆(?)で結ばれているか…。いずれにせよ、忘れられない体験になること間違いなしです。
ルール自体はシンプルで、20分程度でサクッと遊べる手軽さも魅力。それでいて、遊ぶたびに異なるドラマが生まれるリプレイ性の高さも素晴らしいです。
こんな人におすすめ!
- ハラハラドキドキのサバイバル体験をしたい人
- 交渉や心理戦、騙し合いが好きな人
- 協力ゲームに見せかけた裏切りゲームを楽しみたい人
- 大人数で盛り上がれるパーティーゲームを探している人
- 理不尽な状況や笑える絶望感を仲間と共有したい人
「ヘルパゴス」は、友情破壊ゲームと名高いですが、それ以上に、人間の本性(?)が垣間見えるドラマチックな展開と、そこから生まれる笑いが魅力の傑作ボードゲームです。ぜひ、信頼できる(と思っていた)仲間たちと、この過酷な無人島生活に挑戦してみてください!